創業初期に創業者石川平蔵自らが作成した擂潰機のカタログを下に記します。石川平蔵の漲るモチベーションが伝わってくる内容になっております。
現代語訳はその下にありますので、併せてご覧ください。
拝啓 貴殿方にはますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
私は、明治25年より東京水産や各府県の水産試験場、水産講習所、ならびに各水産関係者のご依頼を受け、水産用機械や器具の製作および改良に専念してまいりました。この間、皆様のご支援のおかげで、次々とご依頼をいただき、日増しに繁栄の途を歩むことができております。これもひとえに皆様のご引き立てによるものであり、深く感謝申し上げます。今後も変わらぬご愛顧を賜り、さらにご用命をいただければ幸いです。
申し上げるまでもありませんが、近年の水産業の発展に伴い、各種の機械にも日々新しいもの、そしてより進歩的なものが求められております。そのため、長年の経験と皆様のご指導のもとに、機械の改良と発明に全力を注いでまいりました。この度ご紹介させていただく乾燥器および擂潰機を考案し、農商務省特許局より特許を授与されました。特に乾燥器に関しては、農商務省水産局および水産講習所のご配慮により、新潟、三重、広島、兵庫の各県水産試験場などに設置され、良好な結果を収め、称賛の声をいただいております。これも皆様のご指導とご愛顧のおかげであり、深く感謝しております。
また、擂潰機に関しましては、この度日本および韓国政府より特許を授与されました。これは経済的で実用的な機械であり、現在東京水産講習所においてもご使用いただいております。こちらも良好な評価をいただいております。この機械の特徴は、短時間で十分に摺砕(すりつぶし)でき、価格も安価で設置場所を取らず、非常に理想的なものです。
今回、皆様のご支援にお応えすべく、上記2つの機械を実費に近い額でご提供したく存じます。どうか引き続きご愛顧を賜り、ご用命いただけますようお願い申し上げます。お知り合いの方にもご紹介いただけますと幸いです。
また弊工場では、乾燥器や擂潰器に限らず、水産用機械全般のご注文をいただいております。現在、三重県水産試験場から地引網引揚機(動力用)をご依頼いただいており、製作中でございます。また、同県水産組合の地引網の人力引揚機も製作中です。他にも水産製造用缶詰機械一式もご依頼いただいており、これらのご注文も引き続き賜ればと存じます。
乾燥器は、専門的な学理や実験を要し、製作に大変な困難を伴うものです。完全な乾燥器は未だに少なく、私も数年の研究を重ね、専門家の皆様のご指導のもとに、ようやく各試験場から良い評判をいただけるものを考案いたしました。以下に機械の概要と価格を示しますので、ご一覧の上、ご用命いただければ幸いです。必要に応じ、乾燥器の設計や製作を行い、ご希望に沿うよう努める所存です。
敬白
工場主 石川平蔵
■特許第16730号 本乾燥機の特徴および説明
この機械は、長年の経験と深くて複雑な学問とを応用して、最も軽量で経済的であり、特に人々のニーズに応えるために発明された、完璧で欠点のない乾燥機です。この装置は主に水産物、具体的には魚の頭やするめ、鰹節、海苔などをはじめ、繭や野菜、その他何でもを乾燥させるために使用され、その結果は非常に良好です。この装置の乾燥方法には、火力を使う方法と、火力と蒸気を自由に組み合わせて使える方法の2種類があります。後者の場合、火力と蒸気の調整が自由で、乾燥させる食品の種類に応じて適切に設定できるため、扱いが非常に安全です。熱気は堅固な鋳鉄管を通じて間接的に供給されるため、火災の心配がないだけでなく、乾燥作業者に対しても全く危険がなく、扱いが非常に軽便です。原料は棚架車を使って出入りさせるので、乾燥品の入れ替えが簡単で、苦労を感じることなく、軽やかで容易、さらに迅速に作業できるため、人手を大幅に省くことができます。乾燥時間は適切で、成果を上げるための乾燥の原理として、水分の蒸発を学理と実験に基づいて平均的に保つように設計されているため、非常に均等に乾燥することができます。以上に加えて他の効用も数多くあり、一度お試しいただければ、その素晴らしい効果を実感していただけるはずです。ぜひともご利用いただきたいと思います。
■本邦特許第16198号 韓国統監府特許第168号 石川式擂潰機の説明及び効用
この機械は、日本と韓国の両政府で特許を取得した、高性能で非常に有利なすりつぶし機であり、国内にはこれを超えるものはまだありません。現在、東京水産講習所で使用されており、大変好評を得ています。この機械は、回転する円盤と特定の角度に調整された2本の杵が臼の底に沿って左右に螺旋状に動き、効率よくすりつぶしや混合が行える設計になっています。
本機には、一重臼と二重臼の2種類があり、一重臼は主にすりつぶしや混合に使われ、二重臼はそのまま材料を臼内で煮沸することもできるため、用途が非常に広がります。一重臼は特に、はんぺん、蒲鉾、ちくわなどの加工に適しており、二重臼は陸海軍、企業、鉱山、工場、旅館、料理店、寄宿舎などの大規模な調理場で米を炊いたり、煮物を作る際に非常に便利です。
また、どんな材料であっても短時間で均等にすりつぶしや混合ができ、動力を必要とせず人力で簡単に操作できるため、非常に経済的です。